Surrounded By Football -サッカーライターが考える-

自分は、サッカーを中心にスポーツ全般を扱う場所に軸足を置きつつ、書くこと以外にもさまざまな仕事をしています。スポーツに囲まれて毎日を送る事ができて幸せです。ここでは、サッカーのことも書きますが、それ以外の話題も。アウトプットの場として用意したものです。シェアして頂けましたら喜びますので、よろしくお願いします。

ブログを移転しました

ここで告知をすることを忘れていたのですが、独自ドメインをとってwordpressでブログを始めました。なので、ここでの更新はこれが最後になる(か)と思います。

URLを以下に貼らせてもらいますので、ぜひこれらからもこちらでよろしくお願いします。

reonatakenaka.com | football makes peace

アギーレジャパン、5人の"新戦力"について

新生・アギーレジャパンの23人が発表され、5日に初陣を迎える。そのメンバー構成は常連とサプライズが入り混じったものであったことは今更ここで記すことはないと思うが、それでも、あの驚きは計り知れなかった。

 

28日の15:30に代表発表が行われるというのはもちろん知っていた。そのとき自分はちょうど川崎フロンターレ麻生グラウンドにて川崎の練習取材をしているさなかだったのでiphoneを片手にtwitterに流れてくる情報を見て確認。メンバーが記された用紙の画像がアップされていたが、「これ、コラなんじゃないか?」と疑ったくらい、衝撃だった。意外という言葉が陳腐すぎるほど予想の斜め上から降りてきた人選に動揺を隠せず、数分間、川崎の選手の練習を普段ほど集中して見ることができなかったほど。

 

特に驚きだったのが鳥栖坂井達弥と広島の皆川佑介。坂井に関しては優勝争いを繰り広げる鳥栖のCBという肩書だけを見れば納得いくかもしれないが、多くの媒体でも報じられている通り、今季の出場試合はわずか5。怪我でなかなか試合に絡めなかったこともあり、中心選手として活躍しているとは言い難い。

 そして皆川。彼に関してはルーキーかつ代表選出時で出場時間が300分に見たず、C契約の選手というところで注目を浴びていた。同じ1年目という点で言えばFC東京武藤嘉紀も該当するのだが、リーグ開始早々から出場機会を得ているだけでなく、アギーレ監督が視察に訪れた試合で目に見える"得点"という形で結果を残していたので驚きはなかった。そういう意味でも皆川の選出は単なるサプライズ以上の衝撃である。実は武藤と皆川に関しては彼らの大学時代から取材をさせてもらっている。なので、彼らについてはプレーや人柄をそれなりに知っているという自負がある。だが、その持っている情報を出す場や機会もなかなかなく…(笑) 自分1人の中にこの情報を留めておくのももったいないと感じたので、ブログにて言及することにした。が、2人だけについて語るのもどうなんだ?と思ったので、5人の新戦力について自分が思うところや、プレーを見た印象などを述べるとする。

 

ポジション順に。

坂井達弥 (鳥栖)

彼を初めて見たのは鹿屋体育大学時代。4バックの中央でプレーをしており、九州大学選抜では現在、名古屋で活躍中の牟田雄祐とCBのコンビを組んでいた記憶がある。183cmと身長があり、左利き。大きな展開を攻撃の軸にする鳥栖にいることもあって、フィードもそこそこできる印象。大柄で左利きのCBというのは言うまでもなく貴重な存在であり、こういう選手がピッチのセンターラインに構えることで広角の攻撃が出来る。アギーレ監督はこの点をかなり重視しているようでもあり、実際に田中順也扇原貴宏など体がしっかりした左利きの選手を各ポジションに抜擢していることからも説明がいく点。話によると林彰洋を視察に21節の大宮戦に訪れたリカルドGKコーチの目に止まったとか。実際にその試合でも2本ほど華麗なロングフィードを決めていた。ただ、ズラタンを倒してPKを献上してしまったシーンに代表されるように、屈強な選手を前に戦うと弱さが出てしまう印象がある。清水戦をまだ見ていないので強くは言えないのだが。去年の湘南vs鳥栖の試合でも並走していたキリノに振り切られたイメージが強くあるので、単に自分の中でそういう印象が拭えていないだけかもしれないが。

 

松原健 (新潟)

大分U-18がまた1人、代表に人材を送り込んだか。というのが彼を見て思った最初の印象。U-21代表候補で9月に行われるアジア大会のメンバー候補でもあったのだが、鈴木武蔵が選ばれたこともあって選外になった(原則、各クラブ1人まで)。そしたらまさかの飛び級を果たしたという訳である。正直、5人の新戦力の中で一番、プレーを見た回数が少ない選手なので詳しくは語れない。それを前提で語らせてもらうと、大柄ながら激しい上下動でサイド攻撃を活性化させ、正確なクロスでチャンスを演出する、"ザ・サイドバック"という感じの選手という印象。180cmと大柄なのも魅力。どうもアギーレ監督は身長の高さも1つ、重視している模様。しかし、大分U-18はいい選手を輩出するな、と。現在9番を背負う後藤優介という選手にも期待しています。

 


 

森岡亮太 (神戸)

やっと、そして、ついに選ばれたか。と、選出を聞いて嬉しく思った選手。2011年の選手権で決勝まで行き、高校サッカーを沸かせた久御山高校の出身(が、当時の3年生は彼の1つ下の世代)。彼が入団した当時、自分はボッティが大好きだったのでよく神戸の試合を見ていたのだが、その中で印象に残ったのが彼だった。かつて神戸を率いていた和田監督が開花させた選手(だと思っている)で、わかりやすく、巧い。細かなタッチで狭いエリアを縫って入っていくドリブルと長い距離を狙ったスルーパス、味方も欺くようなトリッキーなプレーなど攻撃センスとエンターテイメント性に優れた選手。だが、個人的に彼のプレーで一番好きなのは強烈なミドルシュート。年に1,2回くらいものすごいゴールを生む印象だったが、今季はその数が更に増えそうだ。それくらい今季は絶好調。プレー1つ1つから見られる自信もものすごい。神戸にサッカー熱をもたらすためにも重要な存在。柿谷らとの絡みが楽しみである。同僚のシンプリシオは「亮太は素晴らしい。無くてはならない選手」と森岡を大絶賛していた。

 

武藤嘉紀(F東京)

初見は彼が高校3年次の高円宮杯。決勝で広島U-18に敗戦を喫して涙を飲んだのだが、そのピッチでかなり存在感を放っており、同僚のFW秋岡(現・早稲田大学4年)と決勝ゴールを決めた広島の越智(現・立命館大学4年)と共にその名を自分の脳裏に深く刻んでくれた選手。そして翌年、たまたま見に行った大学サッカーの試合のメンバー表を見たら慶応に所属していることを知った。1年目からレギュラーで圧倒的な存在感を出すも、膝の怪我で戦列を離れる。が、戻ってきてからはそのポテンシャルを最大限に発揮。キレのあるドリブルと左から中へカットインしてからのミドルシュートはわかっていても止められないレベル。正直、大学サッカー界では飛び抜けていた存在。昨年のアミノバイタルカップ準決勝で中央と当たった際、7-5の打ち合いの中でハットトリックを達成したのだが、試合後に慶大の須田監督がため息を付きながら「よっちは別格だね」と驚いていたのと、当時の主将である松下純土(現・松本山雅)が「あいつマジでウイイレですよ(笑)」と讃えていた(?)ことは忘れられない。

ちなみに人間性も最高に良く、試合後の取材対応もチームがどんな結果であれしっかり対応してくれる。心に暗い部分が全く見えないのが正直なところ。余談だが高校時代の彼の同級生いわく、「体育の授業でサッカーをやっていたら、ゴール前までドリブルで運んで、体育が得意でない友達にパスを送ってその子にゴールを決めさせて、喜びを爆発させて祝福するタイプ」らしい。本当に非の打ち所がない。

Jでも8得点を記録しており、渡邉千真の新人得点記録を更新しそうな勢いだ。原口元気との定位置争いが楽しみである。

 

皆川佑介(広島)

C契約の状態で代表に抜擢され、一躍シンデレラボーイとなりそうな気配漂う大型FW。これまでの日本代表に欠けていた、最前線において世界とも争える高さと横幅の両方を兼ね揃える貴重な存在。クラブの歴史にその名を刻む高木琢也氏の愛称になぞらえて"アジアの大砲2世"と呼ばれていたりする。とにかく彼の強みは体の強さを生かしたポストプレーと、ボックス内での競り合いの強さ。趣味が筋トレで、これでもか!というほど体を鍛えておりチームメイトからは呆れられていたというような話が大学時代にはあった。

 現在リーグでは3ゴール3アシストと得点に直結するプレーで存在感を見せているが、実は大学時代はそこまで得点力がある選手ではなかった。川崎F所属の安柄俊と3トップの中央を争っていたのだが、得点力の点で圧倒的に安に劣っていた。よく言われていたのが「ボールはめちゃくちゃ収まる。けど、前を向いたプレーが少ない」ということ。相手を背負ってボールを収め時間を作るプレーは圧巻なのだが、その強さを前向きの体勢で発揮する場面は少なかった。大学時代に皆川と対戦経験のある某選手と最近、皆川の代表選出について話したのだが、「あんなに点をとれるイメージはなかった」と舌を巻いていたほど。ただ、レベルを数段上げたプロの舞台で大学時代の"課題"とも言える点を克服して結果を出しており、リーグを代表するFWである佐藤寿人という選手をベンチに追いやるのだから、その成長曲線は評価されてしかるべしだし、それが代表選出という形に結実したのだろう。横からどんどんボールを入れるスタイルのチームであれば、爆発できるだろう。武藤と同様に真面目で取材対応もしっかりしている選手なので、露出次第ではJリーグに新規ファンを送り込む一役を担う存在となり得る。というか、そうなって欲しい。

小ネタだが、広島への入団に関しては練習参加をした時点で決めたという。入団が決まってから、広島カラーの紫のスニーカーを常に履いていたのが懐かしい。それを見たスタッフからは「完全に広島に染まった」と笑われていたりもした。

 

 

と、長くなったが新戦力の5人について記してみた。やはり、取材歴の長い選手への言及量は増える。これでも少ないくらいだが。

新しい風が代表に吹き込むことは「代表の重みが無くなる」というネガティブな意見もあるが、「誰にもで開かれているということで、これまで以上にあきらめないで頑張れる」という意見もあるし、実際に選手目線で言えば後者が正解になるだろう。そしてそれがJリーグの活性化にも繋がるし、"代表選手見たさ"にスタジアムまで足を運んでくれる新たなファンが増えるとなお、良い。

そういう意味でも、この5人の活躍には大いに期待したい。

 

では、今日はこんなところです。

 

 

無観客試合の影響力や妥当性を考えてみた

例の横断幕における浦和レッズ無観客試合が決まった訳で、週末にその試合を控える。全くどんな雰囲気で展開されるかは想像出来ないので、非常に興味があるのは間違いない。

さて、この制裁。妥当である一方で妥当でない気もしている。と言っても、万人が納得する正解というのは存在しないし、そもそもこの無観客試合の遂行という制裁がある種、導かれた"正解"なのだが。

今回の制裁における"最重要事項"は、"再発防止"だと自分は考える。ただ、最終的に行き着くべきところは横断幕で差別的なメッセージを掲げるような観客がいなくなることではなく、差別的意識を持つ観客がゼロになることだが。まあこの一件をきにその目的を達成するのはほぼ不可能なので、やはり再発防止が今回の制裁の目的であるかと。つまり、このような愚行に及んだ一部の観客が"自分達のせいでクラブが不利益を被ってしまった。日本サッカーに対して汚点を付けてしまった"と自覚させるのが"制裁"の1つの目的であると考えられる。そこで無観客試合というのは今述べた自覚させるべき点の後者には該当するだろう。なんせ"Jリーグ史上初"の出来事であり、普段はJリーグのニュースを大々的に扱わない報道番組にも取り上げられたことにより、世間一般におけるサッカーの価値を下げてしまった可能性があるからだ。

 ただ、見方によれば無観客試合はというのはサポーターにとって1試合の入場禁止という程度のものであり、それは1人あたりの2000円〜3000円程を払うことによって得られるさいたまスタジアムでの高揚感が"1回休み"になるというもの。これが個々に与えるショック度はそれぞれ異なると思うので言及は控える。だが、明らかに数値化できるものが一方で存在する。それが浦和レッズというクラブが入場料等で得られる収益の損失だ。それはおよそ3億円と言われている。これは相当大きい。でも、実際3億と言われても「これ、どれくらい大きいの?」という話になるのも事実。

 

 ということで計算をしてみた。2012年度のJクラブ個別情報開示資料によると、2012年度の浦和レッズの入場料収入は19億8800万円。

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ざっくり20億円としたら、3億円はその15%にも上る。これでピンとこない人にもう1つ例をあげるとすると、2012年にJ2で優勝を果たした甲府(当時湘南担当で、小瀬にて目前に昇格を決められた苦い想い出…)の入場料収入が2億9100万円。つまり、浦和ー清水の無観客試合を金銭的に換算すると、2012年度におけるヴァンフォーレ甲府の1年間の入場料収入分に該当するのだ。自分もこの計算をしてて「本当か?」懐疑的になったが、資料をもとにやる限り間違いないと思う(一方で、若干不安もある)。
つまり、浦和レッズに与える経済的ショックは、日本サッカー界のお金の動きを考えた上で相当大きいのである。そして今回のポイントは、”この制裁の重さをサポーターがどれだけ感じ取っているか”ということ横断幕の掲示に関わった観客は無期限の入場停止が課せられるようなので、自分達の行為の重さを反省しているかもしれない(そうでないと困る)。が、ある種彼らの存在を容認して統制をとることが出来なかったという点も考えると連帯責任とも言える今回の件に関して、クラブとサポーターに同等の責任を感じさせる措置が適切なのかなとも思う。となれば、ここまで述べた通りで、無観客試合はクラブに対して分が悪すぎる。"もう2度とこのようなことを繰り返してはならない"とクラブに関わる全ての人が感じ取るためには、勝ち点剥奪という形が適切なのではないかとも思う。なんせ、勝ち点はそのクラブに関わる全員にとって同じ価値であり、重みのあるものだから。仮に、その剥奪された勝ち点によってタイトルを逃したとなれば、それが負の遺産となって"今年起こしたような不祥事は2度と起こしてはならない"と多くの関係者、サポーターが強く思うはず。

 なので今回に関してはそういう対応が一番良かったのではないなと個人的には思っている。ただ、今更ああだこうだ言ったところであの横断幕の問題がなかったことになる訳でもないし、勝ち点をどれだけ剥奪すればいいんだ、という議論にもなるだろう。なかなか難しいものだ。

一応添えておくと、自分は浦和レッズが嫌いでこういうことを言っている訳ではないし、アジアを代表するクラブに成長して欲しいという思いは、前回のブログでも述べたとおり、存在する。そこは誤解しないで欲しい。

 

結局のところ行き着くのは最初に言ったとおり。このような出来事が二度と起こらないようにと、願うのみである。

 

では、今日はこんなトコロで。