Surrounded By Football -サッカーライターが考える-

自分は、サッカーを中心にスポーツ全般を扱う場所に軸足を置きつつ、書くこと以外にもさまざまな仕事をしています。スポーツに囲まれて毎日を送る事ができて幸せです。ここでは、サッカーのことも書きますが、それ以外の話題も。アウトプットの場として用意したものです。シェアして頂けましたら喜びますので、よろしくお願いします。

【読みました】知の逆転

自分の思想を語ったり、時事問題に触れたり、サッカーのことを語るだけでも面白くなさそうなので、映画や本のレビューもここでガンガンしていこうと思う。

 

という訳で一発目。発刊されたのは昨年末だが、本屋で平積みされていて目に止まったので購入。これがとてもよかった。とても。

 

その作品とはこれ。
 

まず手にとった経緯を説明しておくと・・・・単純にノーム・チョムスキーという人物が僕にとってのアイドルであるから。アイドルというと変な感じがするが、一種の憧れというか、自分の人生や価値観に影響を与えてくれたカリスマ的存在なのである。僕は学生時代に国際関係や平和学を学んでおり、今後もその道に進んでいきたいなんて野望も持ち合わせているのだが、ここの知識を増やすためにより多くの書物を読もうと、アンテナを張ろうと思ったのが大学入学直後くらいのとき。そこで、某予備校の教授(僕はこの人をだいぶ尊敬している)が"国際感覚を磨くため"(ここまで言うとこの教師が誰か分かる人は分かる。今でしょ!の人ではないことは確か)というような切り口で薦めていたのがノーム・チョムスキーの"メディア・コントロール"だ。というわけで買って読んでみたのだが、18の僕には色々と衝撃で、これ以降いい意味でも悪い意味でも世の中の事象を考え、疑うようになった。

と、本題から逸れたが、詰まるところそれ以来チョムスキーというワードには反応してしまうようになっていたので、これにも自然と手が伸びたということだ。

 

チョムスキーの著書をある程度読んでいる人ならば、「なるほどね、これ他のところもでも言っているよね」という感じでリンクさせることによる面白さを感じることが出来るだろう。ただ、他の人達の章では全く自分の専門外の分野について触れられているので、だいぶ脳を刺激されたし、言ってしまえば吸収すべき知識と脳の容量が吊り合わなかったくらいである。

その中でもジャレド・ダイアモンドの文明論は割と印象に残ったので、まずは彼の著書を読んでみようと思った。

ただ、正直に言うとここで書かれている内容の6,7割はもう忘れている。読んだ直後は"今すぐにでも誰かにこのことを教えてやりたい"というレベルだったのだが。とりあえず、1回でここに記されている全ての事項を頭に叩き込み、自らの血として、肉とするのは無謀である(自分のキャパが少ないせいかもしれませんがそれは目を瞑ってくださいw)。正直、年に1度は絶対に読みたい。そう思わせる程度には名作であり、手元に置いておくべき一冊だと自身を持って言える。間違い無く言えることは、図書館で借りて読むタイプの本ではない。これは竹内薫さんも絶賛するわけだ。

 

もう1つ言及しておきたい点がある。
この本、表紙に並べられているインタビューイーを見てその面白さを確信する人はいると思うし、実際にそうなのだが、それ以上にインタビュアーが素晴らしい。
この吉成真由美さんという人物、恥ずかしながら始めて名前を目にしたのだが、知識の量という面で、恐ろしく頭が良い。

生きている分野が異なるこの6人に対して台頭に渡り合っており、核心を突く質問を貫徹している。職業上、サッカー選手をはじめとしたアスリートにインタビューをすることが多いのでわかるのだが、質問する際に背景知識があるに越したことはないし、その有無が実際に質問をぶつけるときの自信に影響してくるもの。それに、問いかけの質はかなり重要で、その人の思想を深堀りできるかどうかにかかってくる。この2点に関して吉成さんの脳内に暗雲はない。

聞き手の重要さをこんなに強く感じ取れたのは久々だ。

そもそも、300ページと一般のものより少し厚い程度の新書にこれだけの情報量を凝縮できる時点で、インタビュアーと編者が只者ではないことはわかる。

 

語り手と聞き手がここまで高いレベルで渡りあう対談集は、そうそうないと思うので、ぜひ手にとってほしいもの。家に一冊、教養を深めたい人は必須の書。

 

余談だが、"対談"という点で言うと

コレ

はけっこう面白かった。大学3年くらいのときだろうか。スラスラと読めた記憶がある。高村薫さんも、日本が誇る知識人の1人でしょう。

(レディ・ジョーカーは途中で断念したので再読します)

 

 

では、今日はこんなところです。