Surrounded By Football -サッカーライターが考える-

自分は、サッカーを中心にスポーツ全般を扱う場所に軸足を置きつつ、書くこと以外にもさまざまな仕事をしています。スポーツに囲まれて毎日を送る事ができて幸せです。ここでは、サッカーのことも書きますが、それ以外の話題も。アウトプットの場として用意したものです。シェアして頂けましたら喜びますので、よろしくお願いします。

無観客試合の影響力や妥当性を考えてみた

例の横断幕における浦和レッズ無観客試合が決まった訳で、週末にその試合を控える。全くどんな雰囲気で展開されるかは想像出来ないので、非常に興味があるのは間違いない。

さて、この制裁。妥当である一方で妥当でない気もしている。と言っても、万人が納得する正解というのは存在しないし、そもそもこの無観客試合の遂行という制裁がある種、導かれた"正解"なのだが。

今回の制裁における"最重要事項"は、"再発防止"だと自分は考える。ただ、最終的に行き着くべきところは横断幕で差別的なメッセージを掲げるような観客がいなくなることではなく、差別的意識を持つ観客がゼロになることだが。まあこの一件をきにその目的を達成するのはほぼ不可能なので、やはり再発防止が今回の制裁の目的であるかと。つまり、このような愚行に及んだ一部の観客が"自分達のせいでクラブが不利益を被ってしまった。日本サッカーに対して汚点を付けてしまった"と自覚させるのが"制裁"の1つの目的であると考えられる。そこで無観客試合というのは今述べた自覚させるべき点の後者には該当するだろう。なんせ"Jリーグ史上初"の出来事であり、普段はJリーグのニュースを大々的に扱わない報道番組にも取り上げられたことにより、世間一般におけるサッカーの価値を下げてしまった可能性があるからだ。

 ただ、見方によれば無観客試合はというのはサポーターにとって1試合の入場禁止という程度のものであり、それは1人あたりの2000円〜3000円程を払うことによって得られるさいたまスタジアムでの高揚感が"1回休み"になるというもの。これが個々に与えるショック度はそれぞれ異なると思うので言及は控える。だが、明らかに数値化できるものが一方で存在する。それが浦和レッズというクラブが入場料等で得られる収益の損失だ。それはおよそ3億円と言われている。これは相当大きい。でも、実際3億と言われても「これ、どれくらい大きいの?」という話になるのも事実。

 

 ということで計算をしてみた。2012年度のJクラブ個別情報開示資料によると、2012年度の浦和レッズの入場料収入は19億8800万円。

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ざっくり20億円としたら、3億円はその15%にも上る。これでピンとこない人にもう1つ例をあげるとすると、2012年にJ2で優勝を果たした甲府(当時湘南担当で、小瀬にて目前に昇格を決められた苦い想い出…)の入場料収入が2億9100万円。つまり、浦和ー清水の無観客試合を金銭的に換算すると、2012年度におけるヴァンフォーレ甲府の1年間の入場料収入分に該当するのだ。自分もこの計算をしてて「本当か?」懐疑的になったが、資料をもとにやる限り間違いないと思う(一方で、若干不安もある)。
つまり、浦和レッズに与える経済的ショックは、日本サッカー界のお金の動きを考えた上で相当大きいのである。そして今回のポイントは、”この制裁の重さをサポーターがどれだけ感じ取っているか”ということ横断幕の掲示に関わった観客は無期限の入場停止が課せられるようなので、自分達の行為の重さを反省しているかもしれない(そうでないと困る)。が、ある種彼らの存在を容認して統制をとることが出来なかったという点も考えると連帯責任とも言える今回の件に関して、クラブとサポーターに同等の責任を感じさせる措置が適切なのかなとも思う。となれば、ここまで述べた通りで、無観客試合はクラブに対して分が悪すぎる。"もう2度とこのようなことを繰り返してはならない"とクラブに関わる全ての人が感じ取るためには、勝ち点剥奪という形が適切なのではないかとも思う。なんせ、勝ち点はそのクラブに関わる全員にとって同じ価値であり、重みのあるものだから。仮に、その剥奪された勝ち点によってタイトルを逃したとなれば、それが負の遺産となって"今年起こしたような不祥事は2度と起こしてはならない"と多くの関係者、サポーターが強く思うはず。

 なので今回に関してはそういう対応が一番良かったのではないなと個人的には思っている。ただ、今更ああだこうだ言ったところであの横断幕の問題がなかったことになる訳でもないし、勝ち点をどれだけ剥奪すればいいんだ、という議論にもなるだろう。なかなか難しいものだ。

一応添えておくと、自分は浦和レッズが嫌いでこういうことを言っている訳ではないし、アジアを代表するクラブに成長して欲しいという思いは、前回のブログでも述べたとおり、存在する。そこは誤解しないで欲しい。

 

結局のところ行き着くのは最初に言ったとおり。このような出来事が二度と起こらないようにと、願うのみである。

 

では、今日はこんなトコロで。